蒼の横顔は、怒りに満ちていた。

『俺、ちょっと先生に綾音のこと説明してくるから』

蒼はあたしたちをその場に残して、走っていってしまった。

『ねぇ…綾音…』

美々ちゃんが小声でつぶやいた。

『なぁに?』

『さっきの栞の態度、おかしくない?この間と全然違うじゃん』

『そぉ…だね…』

『蒼くんの前だから…?もしかして綾音をこんな目に遭わせたのって、栞なんじゃない…?』

『そんな…美々ちゃんちゃんてば…証拠も何もないし…確かにあたしのことは好きではないと思うけど、それだけでこんな…』

栞ちゃんがあんなことするなんて、信じたくない…

『美々ちゃん、それにね…トイレで水かけられた時、何人かの足音が聞こえたの…だからひとりじゃないんだよ…』

『綾音…。高校でこんな目に遭うなんて…。何でだろ…何で綾音が…?』

『大丈夫…』

『綾音…』

『あたしには…味方がいるから…』

そう言うと、美々ちゃんはあたしを抱き締めた。

『ホント…お人よしなんだから…』

どんなにあたしを嫌いな人たちがいても…
あたしはひとりじゃない。

あたしの大切な人たちが、あたしを大切に思ってくれてる。

それだけで強くなる。