幼なじみ〈上〉

『蒼くん…ずっとね、誰かに本気で話を聞いてほしくて…誰かと真剣に言葉交わしたくて…でも誰のどんな言葉も…嘘くさくて…いつの間にか自分の言葉さえ偽りになってた』

『うん』

『そしたら…他人も自分も信じられなくて…他人も自分も大嫌いになってた…』

それが、夏川の心の声だったんだと思った。

『絢音が…初めから気に入らなかった…。幸せそうで…きっと何も苦しんだことなんてなくて…蒼くんみたいな人が、そばにいて…神様は…不公平…!』

夏川が泣き叫んで、俺の服をつかんで離さなかった。

『違うよ…夏川。きっと…誰もが傷を持って生きてる。人の心の中までは…他人にはわからないんだから』

自分が辛いと、人が幸せそうに見える。

でも悩みにない人なんで、絶対にいない。

みんな必死に悲しみを隠して、明るく生きてるだけなんだ。

『蒼くんみたいな人間には、栞の気持ちなんかわかんないっ』

『…おまえには同情する…だけど、同じことを誰かにしたって憎しみは続くよ。どこかで終わらせなきゃ…』

俺は、泣き続ける夏川に言った。

『おまえの過去がどれだけ残酷でも、俺はおまえのしたことを許せない…』

そう言って俺は、夏川の頭をそっとなでた。

その行動に驚いた様子の夏川は…俺を見上げた。

『ごめ…ん…なさ…い…』