ずっと聞いていたらいきなり

彼は、歌うのをやめた。

そして、

「ねぇ、顔も出さないで立ち聞きなんて
随分悪趣味なんだね、きみ。
そこにいるよね?
隠れて聞くんじゃなくて堂々と
堂々と俺の前にきたら? 」

なに、こいつ。

歌ってるときとの差が激しすぎでしょ。

あたしは、彼の前に出ることもなく

その場をあとにした。

なにかを落としていることにも気付かずに。