舞は溜息をつきながら、エレベーターに乗ると、

ドアが閉まるその瞬間まで、英志の後姿を追っていた。


…後姿でもカッコいい人っているんだな。

舞は改めて思った。


…それから一週間、舞は決意を固める為、

英志のマンションには帰らなかった。


そして週末、別れの日を迎えた。


別れを告げられた英志の顔が、頭から離れなかった。

今まで、会社でも、一緒にいる時でも、

そんな顔を見たことがなかった。


傷つき、驚き、悲しみ、怒り。


その感情がすべて交わった顔。

その顔が何とも言えないほど、寂しげに見えて、

自分のした事への罪悪感に舞は蝕まれた。


「…英志さん」

自分の家の中、舞は何度となく、英志の名を呼んでいた。

自分の家なのに、英志に別れを切り出したのに、

名前を呼べばすぐそこに、英志がいるような気がして、


たった数か月、英志と一緒にいただけなのに、

英志がいないと、こんなにも抜け殻になるとは、

思いもよらなかった。