「貴洋先輩」

しばらくの沈黙の後、舞が重い口を開いた。

貴洋は黙って、舞を見つめる。


「…私が、社長から離れたら、

社長を助けると、誓ってくれますか?

何もかも取り消して、社長は社長のままで」


涙目で訴える舞を見て、貴洋は胸がギュッとした。

舞を傷つけたわけじゃない。

・・・だがしかし、社長を攻撃すれば、舞が悲しむのは無理はない。

…舞はきっと、貴洋より、社長の方へ気持ちがいっている。

一緒に住んでいれば、理由はどうあれ、社長を好きになってもおかしくない。


英志は完ぺきな男だから。


「舞ちゃんが社長から離れてくれさえすれば、

報告はしない、社長もそのままのポストにいられる」



「…分かりました。必ず、社長から離れて見せます」

そう言った舞は、喫茶店を出ていった。


…舞は知ってしまった。

自分がどれだけ、英志を愛してしまっていたかという事を。