何が何だかわからない英志を置いて、

舞は合鍵を英志の掌に載せると、

振り返る事もなくマンションを後にした。



…振り返れなかった。


こんなに涙でぐちゃぐちゃな顔。

最後に見せるわけにはいかなかった。



…愛おしい英志さん。

・・・こんな私を愛してくれてありがとう。

…私も、英志さんを。



その言葉がかすかに聞こえたが、

英志の耳に届く事はなかった。