その言葉を聞いた舞は、

英志をギュッと抱きしめ返した。


その初めての行動に、英志はたまらなく嬉しかった。

…今なら言える。そんな気がした。


「…舞」


「…英志さん、私、もう、ここから出ます」


「・・・・」

英志は耳を疑った。

舞を抱きしめた腕は緩み、その手は舞の肩に行く。

そして舞の肩を掴んだ英志は、舞を真っ直ぐに見つめた。


「舞、俺は・・・」


「荷物は夕方運びました・・・

今までお世話になりました」

そう言った舞は、これまでで一番優しい笑みを浮かべていた。


…しかしその瞳からは、大粒の涙が一粒、

ポツリと、落ちていった。


「舞、話しを聞いてくれと言っていただろう?」

諭すように言った英志に、舞は首を振る。


「さようなら、英志さん」