電話の主は誰なのかすぐにわかった。

舞は、店内に掛けられた時計を見てハッとする。

…1時間?!

急いで帰って作らなきゃ間に合わない。

急いで会計を済ませた舞は、英志のマンションに急いで帰った。


そして、テーブルに置かれていた合鍵で鍵を開けると、

早足で中に入っていく。

でもすぐにその足は止まった。


「…1時間したら帰るって言いましたよね?」

そう言って一点を見つめる舞。


「思ったより仕事が早く片付いたんだ」

そう言って意地悪な笑顔を浮かべる英志。


「本当はもう、終わってたんですよね?

そうじゃなきゃ、さっきの電話から20分で、

今ここに英志さんはいない筈です」

そう言った舞の顔は、なんだかふくっれつらをしていた。


留守電に美味しいハンバーグを作ると約束していたのに。

・・・そのハンバーグはまだ、影も形もない。

だから、すぐに英志に食べさせてあげられないと思うと、

なんだかもどかしくて。