その夜、英志と舞は一夜を共にした。

とはいえ、男女の関係になったわけじゃない。

ただ、英志は舞の手を優しく握りしめ、夜景に見入っていた。


そして舞もまた、英志の大きな手をキュッと握りしめ、

夜景を見ていた。だが、舞はいつの間にか眠ってしまって、

気が付けば朝だった。


「・・・?!」

窓から零れる朝日に目を覚ました舞はパチッと目を開けた。

ヤバい、眠ってしまった。

そう思ってまだ醒めきっていない頭を何とか回転させながら、

席から立ち上がろうとした。・・・が。

繋がれたままの手が、それをさせてはくれなかった。


「起きたのか」

「?!…はい…すみません、眠ってしまって。

あの、ここ、お店ですよね…お店の方に、迷惑を・・・」


舞はそう言って申し訳なさそうな顔した。

そんな舞を見て、英志は優しく笑って見せた。


「ここをオレが貸し切ってる時は、よくある事だ。

何も考えたくなくなると、いつもここに来て、気が付けば朝。

なんて言う事はしょっちゅうだ・・・・

それより、昨日と違って、スッキリした顔をしてるな」


「…社長のおかげです」

それは舞の本心だった。

一人でいたら、眠る事も出来ず、一晩中泣いて過ごしていた事だろう。