誰もいない廊下に連れてこられた舞は、

振り返ったこの顔を見てようやく社長と言った

男の言葉に納得がいった。

今、目の前にいるこの男は、岡崎英志社長だ。


入社式の時に初めて顔を見て、それからは何度か

ロビーで見かけたことはあったが、こんなに近くにいるのは初めてで、

舞は、どうしていいかわからず、黙ったまま英志を見つめていた。



「今のは事故だ、これで忘れてくれ」

「・・・え」


舞の手に、英志は何かを握らせた。

ありえないこの状況に、舞は怪訝な顔をした。


英志はそれ以上何も言わず行こうとするが、

英志の行動に腹が立ち、英志を呼び止めた。


「社長、このお金は何なんですか?」

「…慰謝料だ」

そうなのだ、英志は慰謝料と言う名目で、一万円を数枚財布から取り出すと、

舞の手に握らせた。


舞は、なんて傲慢な男なのだろうかと腹が立って仕方がなかった。

「女を舐めんな!」

パチンッ!!