静香が二人を追わなくなって数か月が経った。

…舞と英志は、何事もなく、穏やかな日々を送っていた。


「舞ちゃん、この住所にあるビルの最上階に、

この花束を届けてね」


それはそれは大きなカスミソウとバラの花束。

送る相手の名前は記されていない。


「・・・あの、この花束は一体誰に?」

舞は首を傾げ、問いかける。



「行けばわかるらしいから、それまで言わないでほしいって

言われてるから」


そう言って、舞から逃げるように、店の奥に入ってしまった。


「…分かるって言われてもな」

舞は不安を抱きつつ、指定された住所の元を訪ねた。



「…ここは」

ビルの入り口に、でかでかと、社名が記されていた。


『長嶋コーポレーション』

今は、社長が代替わりし、かつて英志の秘書を務めていた長嶋が、

この会社の社長をしている。

…最上階と言えば、きっと社長室があるに違いなかった。