「こんな事をして、貴女に何が残ったんでしょうか?」

英志は静かに問いかける。

・・・しばらく黙っていた静香だったが、

重い口を開いた。


「何も残るわけがない。

…しいて言うなら、虚しさだけ」

そう言って静香は溜息をついた。


「それなのに、なぜこんなこと続けるんですか?」

怒りを抑えながら、舞が静香に問いかける。


「壊れてしまえばいいと思った・・・。

2人が憎しみ合い、別れてしまえばいいと・・・

運よく、私の所に英志さんが来てくれるんじゃないかって、

心の中で思ってた・・・。

でも全然違った。…二人の仲は、壊れるどころか、

どんどん絆は深くなる一方で、もう半ば、やけくそだったのかも知れないわ」


そう言って静香は、呆れたように笑った。

…舞は、そんな静かに何も言い返す言葉が見つからなかった。


深く愛してしまったから、静香はこんな行動に出てしまった。

自分と英志が結ばれなければ、思い詰めていれば、

もしかしたら同じような行動に出てしまっていたかもしれない。

そう思うと、静香の事が自分の事のように思えてならなかった。