…時間は刻一刻と式の時間に近づいていた。

教会の前、歩みを進めた舞の目の前に、

英志の後姿がそこにあった。


「…英志さん」

その言葉に、タキシードに身を包んだ英志が振り返る。

舞はその大きな胸に飛び込んだ。


「舞?!・・・どうした?周りの人たち驚いてる」

驚きと少しのテレを見せながら、英志が言った。


「少しだけ」

舞は何もかも忘れたかった。

自分が好きなのは、英志で、決して長嶋ではない。

そう確認したかった。


「…舞?緊張してるのか?」

何が何だかわからない英志は、舞に優しく問いかける。


・・・あぁ、やっぱりこの腕の中が一番落ち着く。

自分には、この人が一番必要だ。

そう思えた瞬間だった。


舞はそっと、英志から離れて、改めて英志のタキシード姿を見た。



「…とっても似合ってます、

惚れ直しちゃいました」

そう言って微笑む舞。