舞も、そして男も、時間が止まったように動かなかった。

…たくさんの社員がいる前で、

あろうことか、頭をあげると同時に、唇と唇がぶつかった。


それが何秒続いていていたのか、

周りの社員達がざわつきながら、舞たちを好奇の眼差しで見つめていた。


「ご、ごめんなさ・・・」

「・・・いや、こっちこ・・・・」

舞の顔を見た男は眉間にしわを寄せた。

なぜなら、舞が驚きのあまり、涙をぽろぽろと流していたからだ。



「来い」

「へ?!」


「ちょ、社長、取引先に」

「まだ時間はあるだろう?」

「そうですが・・・」

「すぐに戻る」

・・・ちょっと待って。

今この男の事を『社長』って呼んだ?

止まらない涙を必死に拭いながら、涙で歪む男の後姿を

舞は必死に見つめていた。