幸せになろうと決めた舞であったが、

持って行くと約束した婚姻届を、

区役所にまだ持って行っていなかった。


…両親に、ちゃんと挨拶をして、

そして、英志の両親にも挨拶を済ませてから。

そう思っての事だった。


そして、新居も、一軒家を立てたいと言った英志に、

舞は首を振った。

英志は社長なのだから、一軒家を建てるくらいどうってことはない。

しかし舞は、英志が今現在暮らしているこのマンションでいいと言った。

3LDKと、申し分ない部屋だからだ。


そんな舞に、英志は、もっとわがままになれと言われたが、

舞は笑顔で首を振った。

舞にとって、今現在が最上級の幸せだった。

これ以上の幸せを手に入れようとすれば、よくない事が起こるかもしれないと、

どこかで思っていたせいかもしれない。



「舞、今日は、デートしようか」

「?!デートですか?」

久しぶりに丸一日、英志は仕事が休みだった。

運よく舞も、この日はお店の定休日で、朝から何をしようかと悩んでいたところだった。