舞は、約束通り、あのマンションにいた。

英志が帰ってくるまで、リビングで。

またもらった合鍵を見つめながら、舞は思った。


こうやって永遠に、英志の帰りを待っていられるんだろうか?

舞と、英志に、幸せな日々が永遠に続くのだろうか?


自分が傍にいて、英志は本当に幸せなんだろうか?


沢山の疑問が浮かんでは消えて行く。


「…ただいま」

「?!・・・」


「どうした?」

ソファーに座る舞の後ろから、英志が舞を抱きしめた。

舞は驚き、顔だけを後ろに振り向かせる。

そして、笑顔を作った。


「いいえ、なんでも。

驚いただけです・・・お帰りなさい」


舞の言葉に、英志の頬が自然とゆるむ。

誰かがお帰りと言ってくれることほど、

幸せな事が他にあるだろうか?


少し前までの英志なら、気にも留めない事だったが、

舞と出会い、舞と生活して幸せを知ってしまった英志だからこそ、

その幸せを知る事が出来たのだが。