「やっと笑った」

「…社長」


「俺は、もう、お前の上司でも、なんでもないだろ」

「・・・そうですね」


「だったら、なんて呼べばいい?」

「英志・・さん」

名を呼ばれた英志は、やっと生き返ったような気持ちになった。

今、英志はもう社長で、誰一人として、

英志を名前で呼ぶ者はいなくなった。


英志を名前で呼んでくれるのは、

舞、一人いればいい。


心安らげる相手は、舞ただ一人だけだ。




舞と、やっと向かい合う事が出来たはずだった。


英志にとって、幸せな日々が戻ってきたと思った。


そう思えたのは、たったの数日だけだった。


舞が、笑顔を向ける相手は、

英志から、違う人物へ、

向けられると知らされるのは、ほんの数日先の事だった。