トントン。

二回ノックすると、入りないさいと、父の声。

舞は静かにドアを開けると、中に入った。


「急に呼び出して、何の話ですか?」

「・・・その前に言う事は?」

「…ただいま、パパ」

そう言って微笑むと、父も満足そうに微笑んだ。


「お帰り、まぁ、そこに座りなさい」

「はい」


舞が座るのを見届け、コーヒーを一口飲んだ父は、

溜息をつくと、話しはじめた。


「舞、会社はどうだ?」

「…忙しいけど、順調です」

仕事先はおろか、辞めた事さえ言わない舞。

どう言っていいかわからなかったからだ。



「…辞めたのに、何が順調なんだ?」

「・・・え?」

そう言った父の顔は急に真剣になる。

舞は、顔色を変え、硬直する。


「社長から、すべて聞いた。

なぜ言わなかった?岡崎物産に入った事。

それに、急に辞めた理由はなんだ?

仕事で失敗したわけでもない、体調を崩したわけでもない」


「それは・・・」