立っていた子が僕に気づいたので
僕がどうしたの?と声をかけようとした時でした

「りゅうせんぜぇぇえー!!!!」救急車のサイレンよろしくだした大声は
喉を痛めたのか少し濁った音になっていて

聞いているこちらが痛々しく思いました

「どうしたの?」と声をかけると
しゃっくり混じりの泣き声で
「ブランコっ!ブランコがぁああ」とのこと

詳しく話を聴いていくうちにわかったことは

どうやら立っていた子以外の子は
ブランコで立ち乗りをして
地面に飛び降り誰が1番遠くまで飛べるか勝負したらしい

見事にみんな着地失敗。そして泣き出したらしい

見ていただけだった彼もみんなが異常なまでに泣くから泣いてしまったらしい。


……うん、子供らしくて実によろしい。
だけど……こんな危ない遊びはいただけないなぁ

「とりあえず怪我したところ洗おうね」と声をかけ
全員公園備え付けの水道まで連れていく

すっかり静かになってしまった5人
「……ねー、龍先生……」と涙目で僕に話しかけたのは膝から血をながしている子
「んー?」
「……おこる…?」その声は怯えながらも必死に絞りだしたのか
震えていた
泥だらけだった子は幸い家が近いので落とせそうな泥だけ落とす、落としながら返答を考える
「んー……怒らないわけがないよ」だって危ないし
「ご、ごめん…なさ…い」せっかく泣きやんだのにまた泣きそうだ
「……もうこんな事しないって約束できる?」なるべく優しく微笑む
泥はだいぶ落ちたので持っていたハンカチで顔などの水を拭き取る
あとはこの子の膝洗って…っと
「…うんっ……」
「なら龍さん怒らない」ニコッと笑む
「ほんと……?」
「うん、もうしないって約束してくれたから、でも、もし次したら龍さん怒るからねー?」と少し冗談げに

「龍さん怒ったらこわいかなー」とすっかり泥がとれて、泥に突っ込んだ恐怖と混乱もとれたのか
通常どおりになった子がいう
「こわいよ?お母さんよりこわいよー」と言ってみるけど
少なくともここ三十年ほど怒った記憶はないので正直な所わからない

「えーー!?やだぁ!」と膝の血が止まった子が言う
どうやらこっちも通常どおりになったらしい。

「ふぅ……、綺麗になった…」と呟きもう一枚持っていたハンカチを濡らす

そして額が赤みを帯びていた子の額を冷やす

「やっぱり熱もってるね…」思ったより腫れてはいないけど
「……たんこぶかなぁ?」
「そうかもねー、お母さんにちゃんと言うんだよ?」頭は後から重症になることも少なくはない
「はーい、先生ありがとー!」と手を振って走っていった

座って泣いてたのと立って泣いてたのはいつの間にか遠くの方に見えた


どうやら全員復活したらしい

あーあ、子供がかわいいのはいいけど

老体にはこたえるねぇ全く