初めての恋はあなたと。番外編

「和也さんが私のことを呼び捨てで呼ぶから…私だけ課長って呼ぶのはなんか寂しいですし」


そして恥ずかしそうに笑った。

…あぁもう。
この子は確信犯か？

絶対そうではないと分かっていながら、つい思ってしまった。

そして気付いた時には、彼女を引き寄せ抱きしめていた。
彼女の控えめでも甘い香りがすぐ近くでする。


「か、和也さん？」

「…本当に君は凄いな」

「え？どこかですか？」

「ありすぎて答えられない」


そう言うと彼女は「どういう意味ですか？」と、クスクス笑う。
そんな彼女を見ていると、さっきの嫉妬もどうでもよくなってきた。

全く関係のない奴に嫉妬しているよりも、目の前にいる彼女のことを考えている方が絶対にいい。


「あの、和也さん今日取引先に行くって言ってませんでした？」

「さっき行ってきたところだ。予定よりも早く終わってな」

「じ、じゃあ…」


言いかけた彼女は不自然なところで言葉を止めた。
それから彼女は言葉を発さない。


「千夏？」


不思議に思い、抱きしめていた腕を解いて彼女の顔を覗き込む。
彼女はさっきよりも赤い顔で下を向いていた。