原さんと次に会うことになったのは、千夏に励まされてから二日後。
話があると言えば、原さんは少し考える表情を浮かべ、話し合う場所として自宅を提案してきた。
「話すなら二人きりで落ち着いて話したいしね」
いや、二人きりという状況下で誰が落ち着いて話が出来ると思うのよ?
しかも自宅って。
そう反論しようとしたが、気付けば原さんは姿を消していた。
相変わらず逃げ足が速いというか何というか…。
確か営業と総務の親睦会の時も、気付いたら姿を消していて私だけ課長とご対面…なんてことがあった。
…まぁ仕方がないか。
どうであれ私の伝えるべきことは決まっているのだから。
「…頑張ろう」
原さんもいなくなり、誰もいなくなったオフィスの廊下で一人そんなことを思っていた。
「で、話って何?」
原さんの自宅であるマンションに着いて、コーヒーをもらって一息ついた頃。
何の前置きもなく聞かれた。
いくら原さんの部屋に何度も来ているとはいえ、もう少し心の準備がしたかった。
まぁ原さんらしいといえばそうだが。
私は持っていたコップを机の上に置いて前に座る原さんを見つめた。
「…今の関係を終わらせて下さい」
原さんはというと驚いた表情を見せたものの、すぐにいつものよく読めない表情に変わった。
「急にどうしたの?」
そう聞かれて、私は黙ってしまった。
本当に言ってしまっていいのか。
そう、ここまできて躊躇った時。
千夏の「大丈夫」という言葉がふと頭をよぎった。
バカにしているわけでもなく、慰めているわけでもなく、ただ純粋に応援してくれた千夏。

