「あっ、どうぞ。甘いものお好きですか?どら焼きなんですけど」


ここから少し離れた実家の近くにある、老舗の和菓子屋さんのどら焼き。



昔からそこのどら焼きが大好きで、あいさつ用とは別に自分の分もさりげなく買ってきている。


「うん、好き」


――ドキッ


ふんわりと優しい表情で笑う彼。


こ、これをトキメキと人は言うの!?


「甘いものはあんまりなんだけど、あんこは好きだからうれしい」


「よ、よかったです……」


か、顔が見れない……///


「じゃ、じゃあ、あたしはこれで!」


「え……」


「お、お邪魔しました!!」



この空間にいたたまれなくて、急いで部屋に戻った。



「ふっ、変な女」


そう言って笑っている彼に気づかず……