時間は午前零時を回っていた。

地下室への階段をゆっくりと下りていく。

数日前にメグが行使した『灯火』の魔術の影響で、足元は良く見える。

石段を降りると、寒々とした地下室へと辿り着いた。

一見すると殺風景なこの地下室だが、普段はメグの鍛錬場として使われているらしい。

それだけに見えない所に手を加えられている。

例えば、ここで爆発やら衝撃やらが起きてもいいように、防音の結界を十重二十重に敷かれ、魔術の威力も外に漏れないように考慮されているのだそうだ。

それだけの事をしておけば、少々派手な魔術を行使しても問題ないという訳だ。

だが俺は、その結界の本当の意味をわかっていなかった。

結界は音や衝撃だけでなく、この地下室にいる『住人』を外界に出さない為に敷かれていたのだ。

…そんな事も知らずに、俺は一人で地下室の中をグルリと見回す。

本当に殺風景な石造りの部屋。

飾り気も何もなく、あるのはただ無造作に放置された怪しげなガラクタ達。

もっとも、俺の目から見ればガラクタというだけで、メグ曰く『曰く付きの品』らしい。

「これが曰く付きねぇ…」

俺はガラクタの中から、不思議な紋様の描かれた小さな小瓶を手に取った。