射撃武器なのに打撃をくれた反抗的な愛銃を棚の上に置き、俺は着替えを済ませる。

学校までは徒歩で通える距離だが、かといって朝のんびりできるほどの余裕もない。

俺とてそれなりに朝は慌ただしいのだ。

母親の作ってくれた朝食を、こんなに朝から品数は食べられないと白飯と味噌汁だけ有り難く頂き、家を出る。

午前七時半。

ホームルームまでには余裕で間に合う。

俺は欠伸をしながら、ゆっくりとアスファルトを踏みしめた。

今朝はまた一段とひんやりとする。

この分だと冬の到来もすぐだ。

色づき始めた街路樹を横目に、並木通りを歩く。

もう一度欠伸。

その拍子に涙が出て、俺は鞄を持っていない手の方で左目を擦った。

…左目は順調だ。

一週間前、俺は大手術をした。

昔から結構ヤンチャで怪我が絶えなかった俺だが、それでも幸運な事に、手術も入院もした事がなかったのだ。

なのにとうとう手術。

しかも他人の目の玉を移植しての大手術だった。

…経過は良好。

ちょっと倦怠感があったり、部屋の隅で知らない爺さんが座って俺に説教したりする事があるが、この際それは気にしない方向でいきたい。

何せ目玉の提供者が提供者なのだ。

この程度で済んでいるのは僥倖というべきだろう。