∞ー連鎖ー

遠藤の死から一週間。理香は母の葬儀やら何やら慌ただしい日々を過ごした。初七日も終わり今後どうするかを考えた。

理香は母の家族の元で生活するかという話を持ち出されたが断った。母の家族が嫌いだったから。母がこんなに苦労したのはそいつらのせいだと恨んでいた。

母は母の両親と妹の勧めで、理香の父とお見合いしたのだが、その男がとんでもない男だった。父はギャンブル依存症で毎日のように借金を繰り返していた。

おまけにタチが悪く負ければ母に容赦なく暴力。まだ幼かった理香も巻き込まれた。そんな父から逃れようと、母は暴力に耐えながらも何とか貯金をし、今の家に引っ越してきた。

引っ越してからしばらく平穏な日々を過ごしていたが、父が母の実家に連絡し、住所を突き止め家にやってきた。

「勝手に出て行きやがって!」

「やめて!!」

理香は地獄絵図の様な光景を見せられた。勢いが止まらない父は、ついにキッチンから刃物を取り出したのだ。

母は父が振りかざす刃物を必死に避け、隙を突いて理香を連れて外へと飛び出した。

「助けて!!」

夕方の住宅街に母の悲鳴が響いた。次々と悲鳴を聞いた住人が飛び出してきた。

「どうした!?」

「なんだなんだ?」

母と理香のすぐ側には刃物を持った父。一斉に住人の男達が父を取り押さえ警察に通報。その場ですぐ現行犯逮捕となった。

そんなことがあったにも関わらず、母の実家は知らん振り。挙げ句の果てには母のせいで父が豹変したとまで言い出した。

と言うのも父は母の家族に対してはとても温厚で誠実な人柄を演じていた。それに父は自作の偽の名刺を使い、会社の社長も演じていた。

中身も良くてましてや会社の社長。その姿にまんまと騙され、裏の顔を全く信じてくれなかった。警察の話で全部明るみになった時、知らなかったと一言だけ。母はそれ以来実家とは疎遠だった。

母の貯蓄のおかげで当分生活には困らないだろう。許可がおりたらバイトをする。

ただ、どうにかして母を苦しめた奴らに復讐をしたかった。そんな時、理香はとんでもないことを思いついた。

「これさえあれば!」

母の実家にこの手紙を送る。誰が死ぬかはわからないが、誰でもいいから…。

(死ね。)

手紙を送って死んでも捕まることはない。どうせ警察も信用しない。もっと言えば何が原因で死ぬかはわからない。

理香はニヤっと不気味な笑みを浮かべながらポストに投函した。