∞ー連鎖ー

泣いて泣いて涙が枯れた頃、家の電話が鳴った。一瞬電話に出るのを迷った。

(あの子だったらどうしよう。)

勇気を振り絞って電話に出ると警察署からだった。

「西警察署の者です。急で申し訳ありませんが、御自宅に伺う予定の者が先程亡くなりまして…。」

「えっ、何でですか?」

「久遠という者が伺う予定でそちらに向かっていたのですが、交通事故に巻き込まれてしまいました。代わりに遠藤という者が伺いますので、後程宜しくお願いします。」

(久遠…。一緒だ。)

そう。久遠も母と同じく名乗った直後に死んだ。手紙を読んでしまうと電話がかかってくる。名前を言うと死んでしまう。

しかしよく考えてみるとおかしな点がある。なぜ理香の携帯には電話がこなかったのか。久遠は携帯に電話がかかってきていた。理香も手紙を読んでしまったのに。

咄嗟に携帯を見てもやっぱり着信はない。拒否設定も何もしていないし、昨日電源が切れていたわけでもない。

「何で…」

あれこれ考えているとピンポーンとインターホンが鳴った。出ると警察官。この人が遠藤という人だろう。

話はリビングで始まった。母の死因は過労と判定された。手紙の事も電話のことも話したがやっぱり相手にされなかった。

「その手紙はどこにあるんですか?」

「関係性が見つからないのであなたに返そうと思いまして。こうして持ってきました。」

テーブルの上に手紙が置かれた。理香は全く信用されない状況に不満が溜まっていた。

「そんなに信用できないなら、あなたが読んでください!」

強い口調で迫った。遠藤はやれやれという顔で手紙を開いた。

「三人目の友達見ーつけた」

そう読み終えた瞬間、プルルルルルと遠藤の携帯が鳴った。

「そんな馬鹿な!」

「信用してないんですよね?」

ブルブル震えた手で電話に出る。

「遠藤慎也だ。こ、殺せるものなら殺してみろ!!」

震えながらも堂々とそう言い放った。

「これでも信用できませんか?」

理香は取り憑かれたかのような笑みを浮かべた。遠藤はまだ震えている。

「し、死ぬわけないさ!健康診断でも異常なかったし、帰りは…そうだ!他の者に来てもらって車を返せばいい。俺は歩いて帰るぞ。こんなもの存在するわけがないんだ!」

遠藤は自分で自分を納得させ、ろくな説明もしないまま警察署に連絡し、歩いて帰って行った。

理香はそんな遠藤の背中を見送りながら彼の死を確信していた。

そして翌日、案の定遠藤は死んだ。徒歩で署まで戻っている最中、飲酒運転をしていたドライバーの車にはねられてしまったらしい。

ドライバーは無事だった。