このまま座ってる訳にもいかず立ち上がろうとすると、氷室直人が手を差しのべて来た。



どうもと言いながら立つと、拓斗に早くしろとせかされる。



みんなの前で下着姿になれというのでしょうか。



この部屋には氷室兄弟と三枝木美奈さん、後数人の男性がいるし。



多分、たくさんカメラマンだと思う。



「拓斗、女性は優しく扱わないと駄目だぞ。お嬢さん名前は?」



気づかれた。



どうしよう。



「拓斗に告ったゴボウちゃんでしょ。なんて名前だったかな。」



ゴボウちゃん?



拓斗がうんざりだと言う顔をする。



「兄貴その話はいいから、ゴボウの事は思い出したくもない。」



そうですよね。



思わず涙がポロリと溢れる。



本当に酷い言われようだ。



色が黒くて痩せていたから、ゴボウでも仕方ないと思うけど、傷つきます。



氷室拓斗にとって、ゴボウちゃんは忘れたい存在なんだ。



分かっていたけど涙が止まらない。




「どうしたの?やっぱり下着のモデルは無理。」



悔しい。



悔しくてたまらない。



下着モデルは出来ないと言えば、絶対バカにされる。



氷室直人の手を振り払い、自分の力で立ち上がった。



そして、その場で服を脱ぎ捨てると。



「お、中々やるね。」



氷室拓斗はなにも言わずにカメラマンを呼んだ。



「時間がないから、今から撮影に入る。みんな準備して。」



三枝木美奈さんに個室に案内され、番号がついてる順番に下着を着るように言われた。



全てが氷室拓斗がデザインした下着らしい。



「社長は海外でも有名なデザイナーよ。ルシエルの全てのデザインを社長がしてるの。」


拓斗はやっぱりすごい人なんだ。



「あなたを見た時、社長のデザインした物に凄く当てはまる気がしたのよ。」


氷室拓斗が私をイメージしてデザインするはずかない。



だって、氷室拓斗の中に私は存在しないのだから。



三枝木美奈さんがどうしてそう感じたのか、分からないけど。


どの下着もたくさんのレースが使われていて、とても素敵だ。


下着に合わせてメークと髪型を変えて、ポーズをとるのにも一苦労。



恥ずかしいと思ってた気持ちは何処かに吹き飛んでしまい、カメラマンの声に合わせてポーズを決めた。



ベットに横になるだけのポーズが難しくて、どの位置に横たわればいいのか分からずにいると、拓斗がいきなり私をベットに押し倒した。



大声で叫んでしまうと。



「本当に色気ないな。」


色気はどうすればでるのだろうか。


私には難しい問題だよ。


「好きな男の事を思って、カメラをみつめろ。」



好きな男は氷室拓斗なんですけどね。



「俺を見てどうするんだ。」



すみません。


好きな男は拓斗だから、どうする事も出来ない。


「加納さん、少し休憩しましょう。」



喉もカラカラで、声もでない。


「社長も満足してると思う。加納さんは思ったより、度胸あるし。」



氷室拓斗に認められたなら、嬉しい。



その後も撮影は続き、終わったのは夜中だった。


お腹が空いたよ。