学会のスケジュールが書いてあるプリントを確認して、聞きたい話に丸を打っていく。


俺と仁奈子はほぼ同じ演題を聞きに行こうとしてるようだ。



まずは・・A101の部屋だ。


扉を開くと、広々とした部屋に、びっしりと椅子が並ぶ。



「どこ座る?」


「真ん中らへん行こうぜ。」



発表が始まるまで、まだ時間がある。


ぞろぞろと出入りする人ごみを眺めて、俺は溜息をついた。



「・・・これがみんな医療従事者だ。」


「そうだね。」


「こんなにいんのに、なんで助けられない命があるんだろうな。」


「・・・うん。」


仁奈子もきっと自分の働く病院でそういう経験を何度もしてきたんだろう。


天井を仰いで、溜息をついた。




「・・・悲しいなって思うとき、ちーちゃんに無性に会いたくなる。」



「あー、わかる。」




俺は指を折って数えた。



「ちとせと離れて・・7年以上たってる。それって小学校入った奴が中1だろ?」


「そうだよね・・。そう思ったらめちゃくちゃ長いね。」


「なのに・・・全然頭から離れねえわ。」



ははっと笑う俺の背名を仁奈子が叩いた。



「離す必要なんてないじゃん。一生片想いしてたらいい!」



「何怒ってんだよ」



「別に。瞬くんがちーちゃんのこと忘れようとするなんて思ってなかったから!」



ったく、感情の起伏は相変わらずか。






「・・・忘れようとしたことなんて、一度もねえよ。」




俺の声に仁奈子が顔をあげた。


切ないでも悲しいでもない表情をするから、俺はすぐに目をそらした。




『ただいまから、第XX回XXを開催いたします。進行は―――』



進行に促されて、どこかの教授が台の上にたつ。


ようやく学会が始まった。