「おふたりさーん、寒いから、いちゃいちゃしてないで窓しめてー。」



保健医のその声でちとせの体がパッと離れた。



「真由ちゃん先生、ごめんなさい!」



「・・・ちっ。」



俺の舌打ちをちとせがくすりと笑った。



にこにこ笑うちとせは、俺に手を差し伸べた。



今度は「いらない」なんて言わねえ。



ちとせの手を頼って、俺は保健室によじ登って入った。





「・・・で、今のってプロポーズかなんか?」



真由がコーヒー片手ににやにやと笑う。



「は!?ちが・・つうか、何勝手に人の話聞いてんだよ!!」


「ここは私の職場ですー!さっきのはプロポーズだよー。ねぇちーちゃん?」


「えぇ!?プロ・・ポ」


「そういうんじゃねえって!クソ真由!」




真由はけらけら笑うし、ちとせはおどおど戸惑ってる。



「だって”責任とれるまで”って結婚とかそういうことでしょー?ふふっ」



・・・コイツ!全部聞いてやがる!




「ちげえよ!こんなとこでプロポーズするか普通!」



「えーでも、ちーちゃんもそう思ったよね?」



「・・思ってない思ってない!!」



慌てて手を左右に振って、ちとせが否定する、けど、顔は真っ赤だ。



・・・ちげえから!!


こんなしょうもないとこで、そんなことしてたまるか!






「そういうのは!いつかちゃんとした場所でするから!!」




俺の言葉に真由もちとせも動きを止めた。




「あ・・・ははっ。」



ちとせは沈黙の中、可愛らしい声を立てて笑った。



真由は何もなかったように、平然と湯気立つコーヒーをすすってる。



「はぁー。で、今のもプロポーズ?」


「・・・うるせえ真由。」



「ごちそーさま。もうお腹いっぱいだわ!」



俺が照れ隠しのために真由と言い合いを続ける間も、



ちとせはにこにこと笑ってた。



幸せそうな顔が嬉しい。



ずっとずっと、このまま、時が流れても、この笑顔を隣でみていたい。