「ちーちゃんに聞いたけど、余命の話聞いたんでしょ?」


「・・・聞きました。」


「・・お父さんもね、”余命20歳”って言われたのよ。」


「え?でも・・」


「亡くなったのは38歳の時。」


「・・・そう、ですか・・。」



・・なんでちとせのお母さんは、穏やかに笑ってるんだ?




・・・市立図書館にある、どんな手記でも、


余命が伸びたって、前向きにおわるんだよ。



38歳・・・?


そんな短くて・・・たまるか。



俺はぎゅっとこぶしを握りしめた。




「お父さんの場合は移植できなかったの。お金はそろってたんだけどね。ドナーが居なかった。」



「ドナーがいれば・・・助かったと思いますか?」



「わからない。結局、合うか合わないかも、予後も・・・やってみなきゃわからないもの。」



・・・やっぱりそうなんだな。



10パーセントの失敗に入ったら、たまったもんじゃねえよ。



「ちとせは・・・待機、してるんですよね?」


「うん。ずっと待ってる。」


「・・・そうですか。」




ちとせの首が少し傾いた。



・・・寝返りか。




ぷくんとした小さな唇。


真っ白な肌。


また、少し動く。


・・・生きててほしい。



ずっと、ずっと…俺より長く。