リビングについて、瞬が一言。


「在宅酸素療法・・・。」


「え?」

瞬の顔を見上げると、在宅酸素の機械をみつめてた。


なんで知ってるの!

すごく勉強したんだろうな・・。


呟き方がグロッキーだったもん・・。



「ほら、ちーちゃんは服着替えておいで。瞬君、楽にしててね。」


お母さんがテレビをつけるけど、瞬の目線は本棚に向いてる。


「あの・・瞬?本読みたかったら読んでいいよ。」


「・・・あぁ。うん。ちぃが戻ってくるまで読んでる。」




床に胡坐かいて、無心で活字を追ってる瞬を見て、あたしとお母さんは顔を合わせてくすりと笑った。


「やっぱりいい子ね。瞬君。」


「うん。すっごくいい人。」


あたしは隣の自分の部屋で制服から着替えて、リビングに戻った。


そしたらお母さんと瞬がテーブルに座って、仲良さそうに話してた。



「じゃあご両親はいつも帰りが遅いの?」


「まぁ、そういうことになりますね。」


「ならいつでも食べに来てね。・・て言ってもまだお腹はすかないか。」



あたしもテーブルについて、二人の話の輪に入った。


「瞬君のお父さんってK大の工学部の教授なんだって!すごいわよね。」


「工学部・・・。あ!だから工業高校?」


「ちげえよ。勉強しなかったからあそこしか入れなかった。」


「でもあの工業高校の就職率ってすごく高いわよね。授業大変なんじゃない?」


「いや・・・。授業はそんなに大変じゃないです。」


瞬はお母さんの前だからか、しっかり喋ろうとしてる。


いつもより饒舌っていうか・・・。



「お母さんは何してるの?」


「歯医者。」


「歯医者さん?!すご・・頭いいんだね」


「そんな二人の期待のホープがこのザマだけどな。」


「なんでよ。すっごくまっすぐでいい子に育ったじゃない。ねぇちーちゃん。」


「ねー。」


あたしとお母さんに褒められたのが恥ずかしいのか、瞬が黙ってそっぽ向いちゃった。


あは・・・可愛い。