「佐野?どうした?」
場所はいつも拓哉が告白してくれる自転車置き場の前。緊張する。息をのむ。

「あのね。私……拓哉のこと好き、だよ?」

そう言った瞬間拓哉は喜んでくれると思ってた。俺も!っていつものように言ってくれるかなって。でも、、、恐る恐る見た拓哉の顔は驚きとなぜか戸惑いがいっぱいだった。

「ありがと。でも、俺、付き合うとは言えない。いつも俺からばっかり言ってて今更考えるとか申し訳ないんだけど…でもちょっと待って」

これだけ言って拓哉は去っていった。

「歩美、だめだった」
「拓哉も突然のことでびっくりしたんでしょ!大丈夫だよ!拓哉がひなたのこと大好きなの、私知ってるから」

歩美はやっぱり優しく話を聞いてくれて、そっか。びっくりしたのか。って変に納得してしまった。きっと好きだって言ってくれる。そんな淡い期待を抱いていた。


3日後、拓哉から呼び出しがあった私はいつものように自転車置き場に行った。ここ3日なんか気まずくてお互いにしっかり話せてなかった。
「佐野!こっち!」
前と同じように笑顔できてくれる拓哉がそこにはいて、あ 良かった。って思ったのは正直な気持ち。

「あのな、俺…いや、まずこれ聞こうかな。佐野?俺のこと好きって言ってくれたよな。付き合うってさ…その…手を繋いだり…キスしたり…?そういうことあるのってわかってる…?」

「え…?」

私はすごくパーソナルスペースが広い。
手をつなぐはいいとして、人の顔がめちゃくちゃ近いキスなんて到底無理だと思っているし、結婚するまでしたくなかった。今思えばそんなこと言うやつ嫌だよなって思うけど、まだ当時は中学生。そんな大人の世界のことなんて考えたくなかった。

「佐野がスキンシップ苦手なの知ってるよ?俺もそれでもいいってずっと思ってた。」

思ってたって過去形か。もう今は思ってないってこと?

「実は歩美からずっと告白されてて………手も繋いだ。正直揺れてる自分がいる………」

「…………歩美…………???」

まって。歩美。ずっと相談してたし応援してくれてると思ってた。でも歩美はずっと拓哉が好きだったって、、、そういうこと、、、?

「俺は付き合ったらスキンシップはとりたい。だから佐野と付き合えるかわからない。でも佐野のことも好き。だからちょっと待って。2人のこと考えるから。」

「、、、、、、、、、わかった、、、、」

私はすぐに走って帰った。
まって。どういうこと?
私がガード堅いから付き合えないって?
歩美に告白されてるって?
拓哉、私が歩美と仲いいの知ってるよね?
3人で遊んだりもしたよね?
歩美、私が拓哉のこと好きだって知ってるよね?全部話してたもんね?

まさかの、私がガード堅いからって理由で
1番仲のいい友達と悩まれるとは
思っていなかった。

2人のこと考えるからって何?
振られてはない。
私か歩美か。
どっちかと付き合う。
どっちかは拓哉が決める。