フェイント王子たち



マスターに促されて、私たちはカウンターの一番奥の席についた。

「ねえ」

「ん?」

「今、マスター、私にだけ久しぶりって言ったよね?」

「ん?」

「有栖は久しぶりじゃないんだ?」

「…」

す、鋭いっ。

「どうなのよ?」

「…康二に振られた日に、ね」

「あ〜、あの日マスターに慰めて貰ったって言ってたか、そういえば」

「そうそうっ。美沙、あの日、クリスマス女子会だったし」

マスターの胸を借りて泣いたことは内緒だけど。