次の日、少し勉強をしようと早めに学校に来たら、
ウィッグを着けていない神咲くんが私の席の隣に座っていた。
私は教室のドアから中に入り、神咲くんの方を向きながら自分の椅子に座る。
「……おはよう、神咲くん」
私がそういうと少しねむそうな顔で、
「………あぁ、神崎さん。…おはよ。」
「うん、おはよう…朝早いね?どうしたの?」
「……話があって」
「?…なあに?」
神咲くんは私の方に体を向けた。
私は元々神咲くんの方を向いていたので向かい合う形になる。
……これはこれで恥ずかしいような。
「…モデルの件で、話があって」
「モデル?…あぁ、この前お話したやつ?」
「……うん、今日の放課後は時間あるか?」
「うん、平気だよ。事務所に挨拶にいくの?」
「それもある。……あと、ポージングとか基礎を少し先生に教えて貰う、予定」
……ちょっとハード?かなぁ…?
「…最初にしたら、ハードかもしれないけど俺が付いてる」
神咲くん付いてたら安心だね…
「そっか!神咲くんいたら安心だよ〜頑張るねっ」
私がそういうと安心したのか少し微笑み
「ふぁ、」と一つあくびをすると、
「…ん。じゃあ、俺、屋上で寝てくるから。詳しい事はライン、しておく。後で見といて」
「うんっわかった!」
「………ん、じゃあ」
というと振り返ることもなく、スタスタ歩いて行ってしまった。
…思ったんだけど、神咲くんってたまに見せる微笑みが破壊力抜群すぎる気が…
まぁでもそれより、今日が初めての挨拶だ。頑張ろうっ!
……実は芸能のお仕事は親の許可がないと出来ないの。
だから、神咲くんに頼まれて、家に帰った夜。
こっそりお母さんに許可をもらっちゃったの。
私のお母さんは綺麗で彫刻みたいな外見とは裏腹に、
明るく、新し物好きで、ノリもよくて面白いところが私は大好き。
おそるおそるこの話をお母さんにしたら二つ返事でOK。
むしろ、「今しかできないんだから、やってみなさい」
とのこと。
あ、ちなみに私とお母さんは日本語、ロシア語、英語が話せるバイリンガル。
たまに顔を見せにロシアに帰ったりする時に困らないように叩き込まれた。
そのおかげで、今のところは何の支障もなし。
おっと…それは置いといて…
とりあえず、後でラインが来たら確認して……っと。
先に課題やって待っていよう。