「ゆ、ゆりちゃんっ!これ………これ!」


目をキラキラとさせて小さな紙を差し出してくる咲に、笑みがこぼれる。




「テストの時、死にかけみたいになってたって言うのに……」



「ほんとになぁー……まさかあの状態で問題が解けてたとはな。」



保健室に鞄を届けに行ったときには王子はいなかった。でも、咲が気持ち良さそうに寝ている姿を見て、彼が来たことは何となく分かった。




「ねぇ、ゆりちゃん………今から……」



「はいはい、行っておいで。王子も待ってるだろうし。」



「……うん!ありがとう!」





そういって廊下を走っていく姿を見て、あの日、フラフラと保健室に向かう咲の姿が重なる。あんなになるまで見過ごしたことに後から後悔した。