「…………で、『黒崎君』はどうするつもりなの？」


黒崎、と言ってくれるのはきっと優しさだろう。


「待ちます。彼女が思い出すまで、ずっと待ちます。」


「あなたは辛くないの…………？」


本当に心配そうに俺を見る顔は、やっぱり咲の母親なんだと思わせられる。




「全く…………と言えば嘘になります。それでも、今の俺にとって彼女といられることが一番嬉しいんです。」


今、俺は笑えているだろうか。きっと歪んだ笑顔だろう。



「そっか…………あなたがそう言ってくれるなら、私は見守ることにするわ。また、ウチに遊びに来てね？あ、久々にお母様にも会いたいわ～。」


やっぱり咲のお母さんらしい。この家族の明るさには何度救われることだろう。


「…………また、伝えておきます。」


きっと今の俺はちゃんと笑えてる。