その場を足早に去ろうとする先輩。
私は彼の後ろ姿を見つめることしかできなかった。
「…………ちょっと待って!」
私の言いたかったその言葉を言ったのは、私ではなくお母さんだった。そしてにっこりと微笑んで、
「黒崎君、よければウチでご飯食べて行かない?」
……………へ?
「お母さん!何言ってるの!?そんなこと言ったら先輩が困るよ!」
「あら、そんなの黒崎君が決めることよ。……………で、どうかしら?」
こちらを振り返ることもなく、ただ足を止め立ったままの状態でいる先輩。
そして少しして、彼は振り返りこう言うのだ。
「…………じゃあ、お言葉に甘えて。」