俺だけが知るお姫様


しばらくお互いのことを話していると、気づけば私の家の前に。


本当に着いちゃった…………

「私の家、来たことあるんですか?」

「うん、何度か。」


それでも、私はあなたのことを忘れてる。

「…………そんな顔をしないでよ。俺は信じてるから、俺のこと思い出してくれるって。」



優しい口調に戻って言う彼に、私はさっきより顔色を暗くする。



「私、クロ先輩のこと知りたいんです。早く思い出したいのに……………何も記憶にない…………」


顔をうつむける私の頭に、何かが乗る。顔をあげると、先輩が手を乗せていた。



「俺はそれだけで嬉しい。もし、思い出さなくても、これからの俺を知ってくれたらいいじゃん。俺も、咲ちゃんのこともっと知りたい。」


「…………ありがとうございます。」

先輩の言葉に自然と笑顔になる。



「家に入りな。また明日。」

「はい!送ってくださってありがとうございました。」


それからクロ先輩は、来た道を戻って行った。