雨宿りと言っても濡れた彼女を連れて行ける場所もなく、ウチに誘うしかなかったが彼女は、何の警戒もなくついて来てくれた。
道中は一つのビニール傘に二人寄り添って歩いた。
時折、彼女の髪の匂いが鼻先をくすぐる
そのたびに、なぜか懐かしい気持ちにさせられる。
しばらく二人とも沈黙で歩いてたが俺の方が沈黙に堪えられなくなり、何か会話をしなきゃいけない気分にかられ、彼女の名前を聞いてみた。
「あの、名前とか聞いても?」
「私の名前は、真白」
「雪の降るとても静かな夜に産まれたから真白」
やっぱり名前を聞いても思い出せない。
思い出せないけど、思い出さなきゃいけない何かがある気がする。