この5年繰り返される同じ朝を、私はいつものようにこなす。
 あの様子を見たら、昨夜のあれは彼にとって最大の失態なんだろうから。それとも私はそれ以外の何かを期待してたとでも言うの?

 バカみたい。

 「食べてたら夏妃んち来るの、もっと遅くなっちゃうじゃん」
 「遅いと思ったら家に帰る。家でご飯をちゃんと食べる。そしてゆっくり寝る。どう?素敵な一日が始まりそうでしょ?」
 「もう怒ってない?」
 「は?」
 「また、夏妃んち遊びに来てもいい?そしたら俺今日はちゃんと帰るから」

全く何もわかっちゃいない。なんでここまで物わかりが悪いんだ。

 「チーズオムレツちょうだい」

私はどさっと乱暴にこたつに座る。ぱあっと顔に明るさを戻して、小寺はいそいそとこたつの上にチーズオムレツとトーストと、いい香りが漂いだしたコーヒーを持ってくる。

 「今日のオムレツは前代未聞の出来の良さだよー!悠真君素敵!」
 「つまらないこと言ってないで、先に食べるわよ」
 「食べて食べて!どう?」

ワクワクしたまなざしが、私の口に吸い込まれていくスプーンに乗せられたチーズオムレツを見ている。

 「うん、おいしい。いいね。このとろっと感」
 「でしょー!!だろうと思ったんだよねー!これは結構俺はやったと思った。もう一日の仕事終わった気がしたねこれ」
 「ちゃんと働きなさいよ。酒井さんが、小寺指名が多いのはうれしいけどお客さんひっかけまくるのやめろと言ってた」
 「ひっかけてなんかないしー。女の子がきれいになっていくのが楽しいわけよ。かわいくなったら自分の作品褒めちぎっちゃうのしょうがないでしょー。それを誤解されても俺のせいじゃないしー」