そこで目が覚めた。
 すでに朝らしく、明るい陽光がカーテン越しに降り注いでいる。
 置時計の針は、七時半を示していた。
 もうすぐ朝ごはんだ。

 また、つらくて悲しい夢だったなぁ……。
 私は見たばかりの夢のことを、また考えてしまう。
 どうして、夢の中では孝宏君に会えないんだろう。
 所詮は夢、と私は割り切って考えているつもり……なのに、妙な胸騒ぎが治まらない。
 不安でいたたまれなくなって、私は部屋を出た。

 そこでばったり雪乃さんと鉢合わせしてしまって、びっくり。
「おはよう、佐那ちゃん。ちょうど、起こしにいこうと思ってたところ」
「おはよう。ご、ごめんなさい。長々と寝てしまって」
「いいって。疲れも不安もあるだろうから」
 いたわるように、そっと肩に触れてくれる雪乃さん。
「ありがとう」
「いえいえ。じゃあ、降りようよ。もうご飯できてるから」
「はい! あの……」
「孝ちゃんも、もうリビングにいるよ」
 雪乃さんが、私の言葉をさえぎって言う。
 聞きたいことが読まれちゃっていたみたい。
「びっくりしてるね。ふっふっふー。佐那ちゃんの考えくらい、お見通しだって! さぁさぁ、赤くなってないで、さっさと降りる降りる!」
 元気良く雪乃さんが言う。
 私はまた恥ずかしくなった。



 四人での楽しい朝食の後、みんなで後片付けをする。
 それが済むと、雪乃さんが言った。
「ねぇねぇ、今日の夕方、花火しない? あたし、今夜にはもう帰らないといけないから」
「いいね! 佐那ちゃんはどう?」
 私にも異存があるはずがなかった。
「もちろん! 楽しみ!」
「じゃあ、決まりだね」
 嬉しそうな雪乃さん。
「それじゃ、花火を用意しておかないと」
 孝宏君が言うと、雪乃さんが首を振った。
「その辺、あたしが抜かってると思う? もちろん、用意してあるから!」
「さっすが、雪乃姉ちゃん」
「ふっふっふー」
 得意げな雪乃さん。
 こういうやり取り、いいなぁ。
 仲良しさがはっきり分かって。
「それじゃ、あたしはまた友達んち、行ってくる。みんな、また後でね~」
 孝宏君、おばあさん、私の三人に向かってそう言うと、出発の準備をするためか、雪乃さんは階段を上がっていった。

「ライブハウスに行かなくちゃね。僕たちも準備してこよう」
「うん!」
 孝宏君と私も、それぞれの部屋へと向かった。