秘密の場所に到着したときには、気温がすでにグンと上がっているように感じた。
 川のそばでこれだけ暑いなら、街中(まちなか)ではもっと暑いだろう。
 どこからか、セミや他の虫の鳴き声が響いている。

「じゃあ、さっそく……」
 孝宏君はそう言うと、石を集めた例の場所の中心部を掘り、缶を取り出した。
 そして、昨日書いた紙を上に入れ、また蓋をする。
 その缶をまた埋め戻すと、土で汚れた手を川で洗う孝宏君。
 その一部始終を、私はそばで見守っていた。

「これでばっちりだね。いつか一緒にこれを開けて、昨日と今日のことを、懐かしく思い出そうよ」
「うん!」
 私は返事をすると、すっと孝宏君に近づき、背伸びをしてキスをした。
 二人っきりって分かってると、ついつい大胆になっちゃう気がする。
 だけど、我慢できなくて。
 孝宏君も喜んでくれたみたいで、素敵な笑顔を見せながら、そちらからもキスを返してくれる。
 唇があったかくて、うっとりしちゃう……。



 それからしばらく、ビニールシートの上に腰を下ろし、おしゃべりをして過ごした。
 時折、私の身体に回した手に力をこめて、自分のほうへギュッと引き寄せてくれる孝宏君。
 そのたびに、嬉しくて胸がキュッとなった。
 また、時々、髪を撫でてくれるのも、この上なく私をドキドキさせる。
 私も孝宏君に、何度も何度も身体を摺り寄せた。

「ねぇ、遊園地に行ってみない?」
 不意に孝宏君が言う。
「もちろん、ここにずっといても僕は幸せなんだけど、遊園地デートもしてみたいなって」
 顔を赤らめて言う孝宏君に、私は「賛成!」と答えた。
「でも、またここにも来ようね。ここは、私たちだけの秘密の場所だから」
「もちろん! じゃあ行こっか」
 そう言って立ち上がる際に、孝宏君はほっぺにキスしてくれた。
「ああっ、不意打ち卑怯だよ。いじわる!」
「だって、したかったから。迷惑?」
「その質問もいじわる! 迷惑なはずないって知ってるのに」
 孝宏君は朗らかな笑顔を見せてくれた。
 その笑顔を見ているだけで、幸せが私の心を満たしていく。

「それじゃ、また案内よろしくね。遊園地まで」
「うん!」
 そして、私たちは遊園地を目指して歩き出した。
 手を繋ぎながら。