仕事納めのビジネス街の、ビルの前に立つ。ビッグマック食べながら、個人情報をペラペラと喋り捲ったあの唇を思い出す。

 ビルから出てくる女の子が、こちらをちらちら見ながら通り過ぎるのを興味もなく見送って、俺は彼女を待った。

 すると、昨日と同じ地味なコートにしゃれっ気の無いマフラーを巻いて、ポケットに手を突っ込み、面白くなさそうに出てくる女の子を見つける。

 手を振って名を呼ぶ。

 「優菜!」

 すると周りが一斉に俺を見て、驚いて固まる優菜を見た。

 彼女ははっと我に返ると、あわてて俺に駆け寄ってくる。ブーツ履いてても安定感のある走りだなと思いながらそれを眺める。

 「ちょっと!ちょっとなに、どうしたの?私お店にはいかないから同伴とか無理だし」

 そう小声で言う。

 「リベンジさせてよ」
 「リベンジ?」
 「そう。昨日俺負けっぱなしだったから」
 「ええー??なになに?そんなに悔しかったの?」

 そう言いながら、彼女の目がきらりと光る。

 「しょうがないなあ。そう言うなら、受けて立ちましょう!言っとくけど、私、全方位死角なしだよ」

 不敵に笑う。どうかな。俺もにやりと笑う。

 彼女の細い腰に手を回し、顎を引き寄せて耳元でささやく。

 「今日は俺のテリトリーで、よろしく」

 そう言うと、目を見開いて顔がみるみる赤く染まっていく。


 もちろん今夜、俺が完勝したのは言うまでもない。