車は街中を迷うことなく進み、ほどなく道端のパーキングの手前で私を降ろし、そのまま車を収めると「行こうか?」と笑顔で導く。

 一歩後ろをついていけば、伸ばされた手が私の指を掬って、流れるような動作で手をつなぐ状況に!

 ひいいい。待てよ、これって前回の続き?だけど私ホスト券持ってないけど!!

 「俺とする正解のデート、楽しんでよ」

 そう、耳元につぶやく。デート!デート券を買えってこと??

 戦々恐々としていれば、到着したのはホストクラブではなかった。

 なんだか高級そうな雑誌で紹介されていそうな高級な店で、足を踏み入れればホスト氏の勝手知ったる様に店員はにこやかに奥へ通してくれる。

 やけに静かな店内の個室へ連れて行かれる。するすると扉が開かれたその個室は、庭の向こうに街の夜景が広がっていた。
 ちょっと高台にあるのか見下ろす景色は誰もいなければブラボー!と絶叫しそうな勢いである。

 「ちょっとメニュー見て待ってて」

さすがホスト氏、自ら椅子を引き私を座らせると、そう言い置いてメニューを手渡され、彼はまた扉の向こうに消えた。

 椅子の座り心地に、なぜか椅子に恐縮したい気持ちに駆られながらメニューを開く。

 え?これ?日本語だけど全部カタカナなんですが!!

 日本語で書かれているメニューの意味が解らないってなんなのか。

 なんとかの、なんとかソースのなんとかで……えーい!!!日本語で書け!書いてある!!  
 私がメニュー相手にジレンマを抱えていると、ほどなくホスト氏が戻ってきた。

 「何にしようか?」

 と、ホスト的営業スマイルであろうやけに甘い顔で微笑まれる。

 「何、と言われても……」

 ホストのくせに気が利かぬ!私前回何食べてた?マックだぜマック!私の食生活のレベルは概ねのそのあたりだと察しろ!

 「こういう店、彼氏と来たりしないの?」

 ……私前回も恋愛関係の貧窮具合を説明したと思うんだけど、気持ちの良い笑顔を浮かべながら人の胸をえぐるなよう!