次の日、妻には内緒で宝くじ売り場へ向かった。妻にお金の事で心配をかけていて、宝くじという現実逃避へ走ったと思われても嫌だったし、自分がそういう事をする人間とはとても思っていないからだ。
 宝くじ売り場は駅周辺にあり、そこまで歩いて行くことにした。秋が訪れる風は少し気持ちよく、照らす太陽はあいかわらず明るく、そして歩いていると暑くなってきた。
 宝くじ売り場へ着くと、人はいなかった。テレビで見た風景では人盛りのイメージがあったが、それも人気店の事であろう。ここはそんなに都会ではないので、人もまばらだった。売り場のお姉さんに尋ねる。
「今やっている宝くじで1億円当たるくじありますよね?」
お姉さんはにこりとして答える。
「はい。ありますよ。この宝くじが1口300円であって、1等が1億円となっています。」
誠は少しもじもじしながら言った。
「じゃあ、それを30枚ください。」
販売員はにこっとして答える。
「連番ですか?それともバラですか?」
誠は言っている意味が分からなかったが、少し考えて理解し、そして答えた。
「全部バラでいいです。」
販売員は慣れた手つきで宝くじを用意し、30枚を手渡した。
「あなたに幸運がありますように。」


 誠は宝くじを買って、自宅へ戻る事にした。初めての経験で最初はドキドキした。
これが当たれば、好きな物が買える。頭の中では当たったイメージしか浮かばなく、時より人目を気にせず、にやりとした。でもまだ当たったわけではない。むしろ当たらない方が多いと、すぐに現実へ戻り、帰宅する事にした。