休日になって昼ご飯を食べた後、何気なくテレビを見ていると、宝くじのコマーシャルが流れて来た。応募締め切り間近。1等なら1億円当たる。いつもよく聞くフリーズだ。自分の友達で高額当選した者など聞いたことがない。誠は夢を見るというタイプではなく、あくまで現実を受け入れてコツコツと頑張る現実派だ。当たったら嬉しいが、当たるはずはない。頭の中で一回当たるシーンを思い浮かべてはまた、シーンを消すという行為を繰り返していた。
 夜になって晩ご飯を食べていると、長女の美香が話してきた。
「パパ。今度の休日どこかへ行こうよ~。クラスの友達の琴音ちゃんはお父さんと一緒に遊園地へ行くんだって。最近みんなで外へ遊びにいっていないし。」
誠は「そうだな…。またいつか行こうな。」といい、唐揚げを口に入れた。
「パパ。いつもそう言って、いかないじゃん。たまには行こうよ。自分のやりたい事やりなさいって言ってたのパパじゃん。」
誠はその言葉が胸に突き刺さった。やりたい事が出来ないのをお金のせいにしている自分。現実はそうなのだが、本当にそれでいいのかと日々悩んでいて行動が出来ない自分。いつも頭の中にあって解決しないでいた。


その日誠は寝つく前にまたお金の事について考えた。副業やアルバイトをしようとも考えたが、お金の事ばかりに執着すると時間がなく、結局娘と遊ぶ時間がない。今の会社で給料が上がるのが一番嬉しいが、どんなに申請しても結局は時間の無駄だ。そうすると頭に残るのは一攫千金を当てて、少なくともしたい事が出来るお金を手に入れる事だ。たとえば1億円が当たったらとしたら、まず当てて会社を辞めるという選択肢は絶対にない。自分が今まで仕事で築いてきた地位や人脈、時間が総崩れする気がしたからだ。でも少なくともお金があれば、遊園地や旅行など家族が幸せに出来る時間は大いにつくれるはずだ。お金で人生を滅ぼしたくないが、お金がいっぱいある事に異議はない。一度今まで買ったことのない宝くじでも買う事にするか…。誠は暗闇の中今の生活を変えるには自分が頭の中で考えるだけではなく、何か行動しなくてはと強く思った。それは家族を幸せにするためにと心の中で思っていたからだ。