「パパ。今日はありがとう。いっぱい遊んで疲れちゃったよ。」
帰りの車内で美香は満面の笑みで言った。理奈もうんうんとうなずき、眠たそうな顔で答える。
「良かったな。雨で残念だなと思ったけど、意外に楽しかったな。また来ようか。」
誠は言った。色々と歩いて疲れたが、それ以上に楽しさが心にあった。
帰りにパーキングで休憩をとり、また出発をした。雨はまだ降っていて日も暗がりになってきた。時計を見ると4時ごろだった。高速道路を降り、国道を使って自宅へ帰る途中、
さゆりが急に「そこの公園へ行こう。」と切り出してきた。
誠はびっくりし、「え!?今から公園へ行くのか?外まだ雨降ってるぞ。」と言った。
さゆりは「めったに行かないから、ちょっとだけいいじゃない。」と言った。
誠は断る理由もなく、駐車場に車を停めた。
「ちょっと外歩こうよ。」
さゆりは傘を開き、車のドアを閉め、娘達も外へ出させた。
誠は妻が雨が嫌いなのに珍しいなと不思議に思いながらも、雨の公園を歩くことにした。


公園はとても大きくはないが、市内では名の知れた公園だった。休日は子ども達がサッカーをしたり、遊具で遊んだりできる公園だが、この日は雨が降っていて、時間も夕方で日が暮れつつあり、鈴木家以外は誰もいなかった。
「あっ。この公園は…。」
誠はひとり言をいった。
雨が降っている夕方で、周りを特に注意して見ていなかったので分かりにくかったが、
さゆりと結婚して、妊娠中に何度か散歩した公園。都会で周りに緑がなく、ゆったりと心大きく育つ子にしたいとさゆりが心強く願って、提案してきた公園。公園には緑がいっぱいあり、子どもの笑顔や笑い声が舞い、公園近くのママたちが談笑する幸せに包まれた場所で誠とさゆりはこの公園が好きだった。
「あの大きな木の近くにあるベンチへ行こうよ。」
さゆりはそう言い楽しそうに娘達を連れ、歩いて行く。大きな木の横に屋根つきのベンチがあり、誠とさゆりはよくここで美香、理奈が生まれる前に、妊娠中のさゆりのお腹を撫でながら、良い子が育つようにと話しかけたもんだ。
「理奈が生まれてから、そういえば一度も言っていなかったな。」
誠はつぶやきさゆりの後を歩いた。