何なの、これ。
悪い冗談だったらいい加減にしてほしい。
だってこんな場所も、
こんな人たちも知らない。
さらに言えば目の前に置いてあるスマとヘッドホンは私の物ではない。
全員が色違いで同じ物を配られているらしい。
私は橙色、右隣の人は私のよりも明るくて薄い橙色、その隣は黄色…というふうに虹色になっているようだ。
心細くて堪らず辺りをきょろきょろと見回す。
すると右隣の男性と目が合った。
高校生ぐらいだろうか?
同じくらいの年に見える。
さっぱりとした短髪。
薄い唇に健康的に焼けた肌。
漆黒の瞳はどこまでも深く、引き込まれてしまう。
この人モテるだろうな、なんて場違いなことを考えてはっとする。
今はそんなこと考えている場合じゃない。