「すいません、これなんですが…」


商品を手にお客がレジにやってきた。


「はい、なんでしょうか?」


世の中には三種類の人間がいる。本を買う人間、売る人間、それから買って転売して利益を得る人間、セドリ。

そして私が戦わなきゃならないのはこのセドリだ。

うちは大手の古本屋チェーンでもなければお高いギャラリー的店でもない。祖父の代から続いている庶民派の珍品古本屋。

珍しい本もできるだけ安価で提供し、役立てて欲しいという願いの元に、街の正しい古本屋を目指しているものの…正直経営は苦しい。


「この本、表紙が日焼けしてるし破れてる割に値段張りすぎじゃないですか?」


客の口角が上がり、私のまゆ毛が下がった。


「…ありがとうございました…」


客が満足げに鼻歌まじりに店を出て行く。

買いたたかれどうにも悔しいが、落胆している暇などない。

先ほどの客と戦いの最中に、1人の若い男が辺りを伺う様な仕草を見せ、マニアックコーナーに入ったからだ。