終わらない七月九日

ボートは手で漕ぐタイプのもので、乗るのに一回五百円かかる。湖は割りと広く、ボートの数は多い。そして私たちは乗り場の係りのおじさんにお金を払うと、三人一緒のボートに乗り込んだ。

「楽しいね!」

オールを持ちながら大ちゃんは嬉しそうに笑った。

「まぁ悪くないな。」

ナツも一緒になって漕ぎ始めると、ボートはどんどんと岸から離れていった。
私は辺りを見回した。岸沿いに埋められた木の枝が湖の上まで伸びて、湖に葉の影を落としていてる。そこでボートはゆっくり止まった。ゆらゆら揺れるボートの上で、私は空気を思い切り吸い込んだ。

「気持ち良い。」

暖かい風に乗ってやってくる緑の匂いが気持ち良かった。